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特定非営利活動法人 メンタルレスキュー協会

2018FITチャリティ・ラン支援先団体である「メンタルレスキュー協会(以下、MR協会)」は、死にたい気持ちを持つクライエントや、悲惨な出来事の直後でショックを受けているクライエントを心理的に支える知識と技術を普及する活動をしています。今回は理事長の下園壮太さんと、理事 兼 事務局長 小野田奈美さんにお話を伺いました。

写真は左から仲矢(FIT広報チーム)、西川あゆみさん(インストラクター)、小野田奈美さん(理事 兼 事務局長)、下園壮太さん(理事長)、佐波潤さん(インストラクター) 

FITMR協会の立ち上げたきっかけを教えてください。
小野田:下園が9.11の際に、心理の専門家として防衛省に声をかけられ、陸上自衛隊の全体を統括する役目として心理幹部を拝命しました。心理幹部は通常の仕事の傍らでの活動していましたが、昇進や給与といった評価にはつながらないものであったため、外郭団体を作り、心理幹部の方に資格を付与することができれば、モチベーションアップにもつながると考えたのが始まりです。下園が自衛隊や東京消防庁の方と協力してMR協会を構築しているときに、私は、たまたま下園のことを違う団体での活動で知っており、MR協会を立ち上げるとのことから、一期生として勉強させていただきたく参加しました。

下園:立ち上げ当時は自衛隊の職員であったため、兼業は不可でした。そのため、OBの方に立ち上げを依頼し、退官後に理事を務めることになりました。

自衛隊は例えば災害派遣といった困難な環境でも働き続けなければいけません。その際、体力面だけでなく、メンタル面でのサポートも必要になります。トラウマになるケースもあるため、トラウマにならないように予防などのケアをするのが、心理幹部というポジションです。例えば米軍であれば牧師などが担うことがありますが、日本では無宗教の国でもあり、それに対応するのが心理幹部の役目です。消防も同様に現場での厳しい経験をすることもあり、同様にケアを行う活動をし始めているところでした。そのために、活動の中で得たスキルを民間の方にも普及することができると考えMR協会を立ち上げました。

具体的には、民間で事故や自殺があった際の周りの方のケアをしています。自殺があると周りの人は自分を責めることが多いです。それに対して普通のカウンセリングでは対応できないこともあります。普通のカウンセリングは傾聴が中心になるが、MR協会としては傾聴はあたりまえであり、悲惨な出来事に対するショックや今にも死につながるほどの思いや悩みを抱いている方への救いを行う、「メンタルをレスキューする団体」としてMR協会を立ち上げ、10年が経ちました。

FIT:団体の活動内容を教えてください
下園:優秀なカウンセラーを育てることに重点を置いているため、講座がメインになっています。一般的なカウンセリングを勉強したが、現場で通用しなかった方などが多くいます。そのような方に対して、講座と試験を提供しています。

ただし、間接的な支援だけでなく、例えば日本赤十字社は心のケアを行う活動をしていますが、日赤の職員のケアをしている人はいません。そこに対してはMR協会が対応しています。また、国境なき医師団の方や、JICAの方にも帰ってきた際には面接を行ったりしています。そういう場には当協会の有資格者を連れていくことでOJTとしてのトレーニングも行っています。

小野田:そのほか、一人ひとりが自分たちのフィールドで活動されています。私も教員へのカウンセリングを6年実施していたり、警察や外部などに行きカウンセリングを。また、チームを組んで活動することもあります。協会本部でのカウンセリングなども行っています。

FIT:心を強くする とは具体的にはどうすることなんでしょうか?
下園:心の強さの定義を考えてみて下さい。ある刺激があったときに破綻することなく対応できることが強さ、と通常は我慢することを考えることが多いが、「避ける」ということも対応の一つ。そのように対応するスキルが大切です。例えば色々と考えすぎてしまう人がいるとします。心をブロックして考えないようにしていても、漏れ出てくることはあります。それは体が出している将来へのサインであり、別に問題ないと私たちは考えます。注目したいのは、ゼロにしないことです。過剰に不安になり集中できないことが問題であり、適度にコントロールすることが大切です。コントロールするにあたり、例えば音楽を聞くなどの最適な方法を探し、行います。心を強くする訓練としてそういった方法を教えています。

FIT:活動にやりがいを感じるときや、続けられた理由などを教えてください
小野田:今まで続けられたのは仲間がいたから、ということが大きいです。また、やはりカウンセリングを行ってきた人が無事に社会復帰できたケースなどはやりがいに感じます。死に関することなど、カウンセラーの中にも関わりたくないと考える人は多いと思いますが、その領域が私は好きであり、現在、癌末期の方へのサポートも2年近くボランティアとしてやらせていただいたりと、少しずつフィールドが広がることもやりがいに感じています。

下園:そういったことはもちろんベースではありますが、やはり「良いカウンセラー」が育っていくということにやりがいを感じます。我々は試験をすべて筆記はなく実技のみとしています。いくら知識があったとしてもパフォーマンスができなければ意味がないと考えています。ちゃんとクライアントのためになるような応答・質問ができるか、面接としていただいた時間を充実したものにできるかをみています。しっかりと受験者を見ながら試験を行っているため、受講者として教えた人が、企業などに就職して大活躍している姿を見るととてもうれしいです。

FIT:現在、団体が抱えている問題を教えてください。
小野田:大きくしたいが、大きくしたくないというところですね。EAP(Employee Assistance Program)会社等で、活躍できる人を育てるためには、しっかりとその人を見て育成させていきたいと考えています。そのため、受講者が増えすぎると目が行き届かなくなるため、手広い活動ができません。また育成にはかなりの時間がかかるものです。育成には講座の受講だけでは終わりになりません。量より質を重視しています。しかし、MR協会の知名度が低いと資格保有者であることのメリットを第三者へ伝えることが難しく、そこがジレンマでもあります。ただし、本当に必要な団体には理解を得られており、少しずつ大きくなってはいます。

FIT:今後の団体の活動計画を教えてください。
下園:設立から8年程ずっと関東で活動していますが、今後は仙台や福岡、名古屋、大阪、北海道などに広げていきたいと考えています。先生として活動できるメンバーは全部で10名程度いますが、ようやく広げることができるようになってきました。

FITFITの支援金の活用について教えてください。
下園:自殺予防のカウンセリングとして最近はSNSが多用されています。SNSを通じたカウンセリングは、いきなり「死にたい」といったコメントのみが来たり、返信が来なかったり、またずっと張り付いていないといけなかったりと、かなり難しいです。そのため、SNSのカウンセラー自身がつぶされてしまうケースが多いです。そういったことへMR協会の持っている知見をSNSカウンセリングの世界に発信していきたいと考えています。まずは実証実験としてLineのようなSNSツールを利用しているカウンセリング団体に対して、独自に今年中に2回行うことを予定しています。今後は実験を通してカウンセラー向けのケア商品としても広げることを行っていきたいです。

小野田:ご縁もあり、20196月に発売されたSNSカウンセリングハンドブック(ISBN:9784414416541) の第4章 危機介入カウンセリングの章は我々が執筆していので、もし宜しければご覧になってください。(http://www.seishinshobo.co.jp/book/b453545.html

FITFITボランティアやFIT参加者へのメッセージをお願いします!
小野田:みなさんのエネルギー量がすばらしいと思います。また金融界の横のつながりが取れているのもすばらしい。自分の仕事以外で貢献しようという心がけや情熱に感化されています。FITチャリティーラン当日はMR協会としても30名くらいで参加させていただき、最後に写真を撮ったりと、とても楽しませていただきました。このような活動をされているということを知れて、すごくいい影響をいただきました。

下園:我々も交流会等にも参加させていただき、FITの活動や他の団体の活動から、非常に感化されました。ありがとうございました。

メンタルレスキュー協会 公式ホームページ: http://mentalrescue.org/about/gaiyo.html

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